田子山富士塚について

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田子山富士塚について

築造の由来

逆修板碑の見取り図

幕末時代、引又宿に醤油醸造業を営み富士信仰に篤い、高須庄吉と言う人がいました。　高須氏が夢のお告げに従って田子山塚に参詣したところ、「逆修」の板碑を発見しました。　　【参考】「逆修」（ぎゃくしゅ）：あらかじめ生きている内に自分の為の法事を修め、冥福を祈ること。
この逆修板碑は、室町時代初めの暦応３年（1340）、廻国の僧（又は舘村の僧）、十瀧房承海（じゅうりゅうぼうじょうかい）が富士山入定に先立ち建立したものと言われています。
富士山を篤く信仰する高須氏はこれにいたく感激し、田子山塚の上にミニ富士山（富士塚）を築造する決心をし、同士を募り、築造期間：明治２年１０月～明治５年６月にて農閑期を中心に作業が進められ完成しました。
この工事には多くの寄進や労力奉仕が寄せられ、数多くある石造物には寄進者合計2416名の名前が刻まれています。

大きさ

　高さ：　約９ｍ
　麓（ふもと）の円周：　約１２５ｍ
　斜度３９度の丸味のある方形をした築山

特長

この塚の規模はもちろん、石造物の数と種類、細工は他の富士塚と比較しても並外れて優れており、当時の引又宿の経済力と近在の人々の富士山信仰への思い入れをうかがい知ることができると共に、貴重な文化財です。
石造物には、神道・仏教・修験道など、多くの系統のものが混在しており、日本人の伝統的宗教観が良く現れています。

神道：「日本健命（ヤマトタケルノミコト）碑」・「松尾神社」・「阿夫利（あぶり）神社」
仏教：「不動明王立像」・「雲切不動尊」・「経ヶ嶽玉垣」
　　　（尾上菊五郎・岩井半四郎・坂東三津五郎など歌舞伎役者名あり）
修験道：「天狗座像」・「烏天狗立像」
富士講：「小御岳（こみたけ）神社」・「烏帽子磐」・「寶永山」

坂東三津五郎・中村芝翫,中村仲蔵・尾上菊五郎,経ヶ嶽

　「富士塚」としての６要件すべてを満足している富士塚は、極めて稀です。

「山頂に祠」があること。
「烏帽子磐」があること。
「小御岳神社」があること。
富士山の溶岩「黒ぼく」があること。
「御胎内」（地下洞穴）があること。
「霊峰富士を遥拝」できること。

中世の富士信仰の遺物があります。

高須庄吉が発見した「逆修の板碑」は暦応三年（1340）のものであり、中世の富士信仰遺物として極めて貴重なもので、浅間下社の御神体として祀られています。
浅間下社の外壁には、木花開耶姫・白糸の滝・食行身禄のレリーフが彫り込まれています。（「木花開耶姫（コノハナサクヤヒメ）」ではなく「金太郎とその母（山姥）」との説もあります。「食行身禄」ではなく「庚申大神」との説もあります。）

（左側：食行身禄）

（裏側：白糸の滝）

（右側：木花開耶姫）

国指定重要有形民俗文化財

「田子山富士塚」は平成18年3月に志木市として初めて「埼玉県の有形民俗文化財」に指定され、令和2年3月16日には「国指定の重要有形民俗文化財」に指定されたすばらしい「お宝」です。

「志木市内の富士信仰」について

かつて、志木市内には富士信仰に篤い人たちがたくさん居り、「田子山富士」の「丸吉講」以外にも、上宗岡の「浅間神社」を中心に、「丸藤講」がありました。
宗岡丸藤講では、明治１３年に「羽根倉富士嶽」を築造しました。
宗岡丸藤講の第八代先達「日行星山」（本名：星野勘蔵）は、篤い富士信仰に基づき「救世済民」を実践すると共に、富士山に７０回余り登拝し、明治２５年には富士山麓（富士吉田市）に「吉田胎内」を開基しました。
この「吉田胎内」は、昭和４年に国の「天然記念物」に指定され、平成２５年に「富士山」が「世界文化遺産」に登録された時、「吉田胎内樹型」として世界遺産の構成資産の一つになりました。
志木市の先人が開基した「吉田胎内樹型」が「世界遺産」に指定されたことは、志木市民としても、誇らしく思えることです。